エティは二杯目の紅茶に口を付けて口内を潤してから、籽玉の方を向いて話を切り出す。
「呼ばれた、とは随分白々しいことを言うな。 語気の荒さが伝わるような手紙を寄越しておいて」
「此方こそ心外だね、寧ろ丁寧に書いたつもりだったんだけれど? それに間違った事を言ったつもりもないよ」
視線を合わせるエティを真っ直ぐ見返しながら、籽玉は表情を内側に隠した。同じ無表情でも、隣の琅玕のものとは温度に随分と大きな差がある。
「アスカの事、どうやって知った」
「あれだけ膨大に垂れ流されている魔力を辿るなんてぼくには簡単な事だよ。 ……何だい、責める様な目をして? 隠していたのはエティの方でしょ」
エティが視線を逸らしてゆっくりと首を横に振る。
「誰も隠してない。 お前が勝手に早とちりしただけだろう。 遅かれ早かれ俺はお前達を」
「不知道! 信じられないね!!」
「籽玉」
挑発するような台詞にも声の調子が変わらないエティに、籽玉は焦れたように声を荒げて相手の言葉を遮った。琅玕がその背中をさすりながら静かに諌める。
籽玉は眉根を寄せながら一度瞳を伏せ、不愉快そうな表情を押し込めて、温度のごく低い微笑を浮かべた。
「……ま、覗き見ていたのは一度だけだし、これからもしないから安心してよ。 信用してもらえるかは別だけれど」
「……。 それより……予知はしなかったのか」
籽玉がカップに口を付けて一口紅茶を嚥下する。
「アスカが此処へ来たのはその瞬間にわかったけれど、予兆は何も。 ……ぼくとしては間違いないと思うよ」
「琅玕はどうだ」
「……おれ個人としては確証はない。 けど籽玉がそう感じるなら、おれはそれに同意します」
「……そうか」