:: RM>>14-04




 夜の帳に紛れ、室内を満たす静謐を殆ど崩さないまま部屋に入り込んだ影がそっとベッドへと近付いた。
 窓から覗く下弦の月が放つ朧げな光をうつす少年の大きな瞳が、仰向けで規則正しい寝息を立てる部屋の主をじっと見下ろす。
 看病疲れでも出たのか、相手が深く眠っている事を確かめると、息を詰めたままサイドテーブルの上に手を伸ばして、その端に置かれたループタイを指で掴む。ことりとも音を立てぬようゆっくりと持ち上げた。
 長い間その場に立ったままでいた少年がやがてループタイを元の位置へ戻し、入ってきた時と同じく、まるで暗闇に溶けるように音もなく部屋を後にする。



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